時には視界を開いて
少しくらいなら問題ないだろう。そう思いつつも躊躇いながら、僕は目を開けた。
少しの空白、その先には、あどけなく無防備な顔で眠る兄さんがいる。
規則正しい寝息と、それに呼応して静かに上下する肩。頰に張り付き、揺れる緑の葉。固く閉じられた瞼と、それを包むように生える薄い色の睫毛。
綺麗で、かわいくて、愛おしくて、いつまでも眺めていたかった。こんな感情さえ抱いてしまう自分には呆れるほどだ。
神様が許してくれるなら、手を取って抱きしめたい。誰より大切な兄さんが、こんなにも近くにいるのに、だからこそ触れることは許されないんだ。
忌まわしいこの指を見つめて、また視界を黒に戻す。いつか君の温度を、この指で感じることができるのかな。
おやすみなさい、ベル兄さん。また明日。
※病んでません