混沌の闇に誘われし旅人の手記

うちのこおんりィエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああアアアアアアアアアッハアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!?!??!!?

うつしよ奇譚

「なあ、おまえアヤカシ信じてるか?」
 突然そんなことを言い出したのは幼馴染の成瀬。急な問いに首をかしげる僕に、成瀬はにっと笑って言った。
「なんてな、おまえ怖がりだし!」

 アヤカシというのは、この街にひっそりと伝わる謎の生き物。何処から生まれ、何を目的として、何処へ行くのか、それは誰にもわからない。ある時は人を襲ったり、ある時は人を助けたり、特に迷惑でもありがたくもない干渉をしてきたり、もう沢山の話が存在して、お年寄りたちが実際に出会ったというそのアヤカシの話を語り聞かせてくれたのを覚えている。
 でも、アヤカシなんて所詮おとぎばなしだ。母親にはよく、早く寝ないとナントカのアヤカシが出るぞ、なんてよく言われたけど、どれだけ夜更かししてもアヤカシに出逢いはしなかった。
 ぎゅっと拳を握って、足早に夕暮れの街を歩く。成瀬の言葉を意識しているわけじゃないけれど、いきなりあんなこと言ってからかってくるなんて。
 ちりりん。
 背後に響いた鈴の音に、びくりと身体がこわばる。しかし、聞いたことのある音色。兄に買ってもらったお守りの鈴の音だった。どうやら、紐が切れて落ちたらしい。振り向いて、拾おうと手を出した瞬間。突然現れた黒猫が、お守りを咥えて走り去ってしまったのだ。
「……!?」
 驚いて立ち尽くすが、急いでその小さな身体を追いかける。しかし、逃げた先は暗い森、その陰に黒猫の姿は溶け込んだ。もう鈴の音も聞こえない。
 僕はがっくりと肩を落として引き返そうとした。が、何か黒いものにぶつかって尻餅をつく。黒い服の、長身の男がこちらを見下ろしていた。
「ご、ごめんなさっ……?」
 あまりの驚きに、僕の言葉は遮られた。最初は、黒尽くめの男の人だとは思っていた。でも、ちがう。明らかにこれは……

____ニンゲンじゃない。

 3メートルはゆうに超える身体。ありえないほど長い脚を曲げて、僕に近寄ってくる。
 逃げなくては、頭ではそう思っていても、足がすくんで動くことができない。そいつが僕に顔を近づけるごとに、背中がぞわぞわして気持ち悪い。
 誰か、と叫ぶこともできない。喉が凍りついたように、震えることを許さない。やがてその化け物は、ゆっくりと『口』を開け、僕に覆い被さった。